BtoBマーケティングの成果を決める「5つのWhy」とは

BtoBマーケティングの成果を決める「5つのWhy」とは

デジタルマーケティングに取り組む多くの企業が、ある時期に同じ壁に突き当たります。「施策は一通りやり切った。数字も一度は伸びた。しかし、そこから先の打ち手が見つからない」という状態です。
本コラムでは、BtoBマーケティングの成果を左右する「5つのWhy」という考え方を通じて、この壁の乗り越え方を整理します。

「半年から1年」で訪れる成果の頭打ち

デジタルマーケティングを開始した最初の半年から1年は、改善すべき点が複数あり、キーワードを追加する、広告文を見直す、フォームを最適化する、コンテンツを追加する等、実施することで一定の成果が出る状態が続きます。

一方で目についた改善点をやり切った2年目、3年目になると、毎月同じ作業を繰り返し、成果も横ばいになりがちです。

ここで必要なことが、新しい施策を打つことではなく、新しい問を立てることです。

「顧客はなぜ買うのか/なぜ買わないのか」といった顧客セグメントの数だけ問を立てることで、新たな層へのアプローチにつながり、成果につながる状態を創り出すことが出来ます。

顧客は「施策」ではなく「理解」と「動機」で動く

デジタルマーケティングの初期段階で行われる施策は、「すでに関心を持っている顧客をいかに効率よく拾い上げるか」というアプローチで行われ、最も投資効率が高い領域でもあります。
しかし、検索順位で1位を取り、広告のクリック率を改善し、サイト内の導線を整えても、ターゲットの「理解」と「動機」が変わらなければ、成果はどこかで必ず頭打ちになります。

なぜならば、目的が施策の効率を上げることにあり、拾う対象となる母数そのものは増えていないからです。

顧客は、露出が多かったから買うわけではなく、「この課題はもう放置できない」「この手段が自社に合っている」という納得があって、初めて動きます。
現状の成果状況を更に一段引き上げるためには、この「動機」にアプローチする量を増やす必要があります。

BtoBマーケティングにおける動機は「大義名分」

BtoBにおける購買動機は、BtoCとはまったく異なる形で現れます。決定的な違いは、「個人の感情」ではなく「組織の納得」で動くという点です。

BtoCなら本人が「良い」と思えばその場で購入に至りますが、BtoBの場合、上司の承認を得て、関係部門の懸念を潰し、金額によっては役員会で説明する、この社内プロセスを突破しなければ導入は実現しません。
そのため担当者にとって最も労力がかかる部分は、競合比較そのものではなく、この「社内説明」にあります。自分が時間をかけて調べ、納得したことを、その製品を見たこともない上司や他部門に、限られた時間で納得させる必要があるからです。

つまり担当者が本当に求めているものは、製品やサービスそのものではなく、社内を通すための「強固な大義名分」と言い換えることができます。
「有名だから」「検索1位だったから」では、社内を通すことはできません。求められているのは、「なぜ今、この製品・サービスを導入する必要があるのか」「なぜ他の手段ではなく、この手段なのか」「なぜ他社ではなく、この会社なのか」といった問いに対する明確な答えです。
したがってマーケティング活動においては、買い手の頭の中にあるこれらの問いを先回りして言語化し、その答えをWebサイトや営業資料に落とし込んでおくことが重要となります。

買い手の頭の中にある「5つのWhy」

では、買い手は具体的にどのような問いを抱えているのか。
私たちは、マーケティング活動を行う上でクリアにすべき5つの問を以下の通りまとめています。

① Why Change?──なぜ、今のままではダメなのか

潜在層にとっての最大の競合は、他社製品ではなく「現状維持」です。
ここでは、PEST(政治・経済・社会・技術)の変化を背景とした「不都合な真実」を突きつける必要があります。
例えば、労働力不足が加速する中で「現状の人海戦術を放置することによる機会損失」を可視化するなど、「もっと良くなる」というベネフィットの提示以上に、「今のままだとまずい」という危機感を喚起し、変化への動機を設計します。

② Why This?──なぜ、この手段(カテゴリ)なのか

Why Thisとは、「なぜ、この解決手段でなければならないのか」という問いです。自社の製品を選ぶ理由の手前にある、カテゴリそのものの妥当性を問う問です。

たとえば「売上を伸ばしたい」という目的を持つ企業を考えてみます。その手段には、営業体制を強化する、商品そのものを改良する、デジタルマーケティングを導入するなど、複数の選択肢があります。つまり顧客は商品・サービスを選ぶ前の段階で、まずどの解決アプローチを取るべきかを比較しているのです。

したがってここで答えるべきは、「当面は今のやり方を続ける」「既存の手法を改善する」といった代替手段に対し、費用対効果や運用面の限界を示しながら、この手段こそが最適である理由を伝えることです。

「当社は優れている」と主張する前に、「この解決アプローチが有効である」という前提を納得してもらう順序を踏むことが、自社に有利な土台をつくります。

③ Why Us?──なぜ、他社ではなく私たちなのか

Why Usとは、「なぜ、他社ではなく私たちなのか」という問いです。
導入の意思が固まった顧客が複数の候補から自社を選ぶ理由にあたり、ここが曖昧なままでは、最後は値引き合戦か知名度の勝負になってしまいます。
注意すべきは、BtoB商材において機能やスペックだけで差別化しきることは、ほぼ不可能だという点です。
優れた機能は競合にすぐ模倣される一方で、他社が新たに搭載した機能はこちらも追加せざるを得ないため、成熟した市場ではどの製品も似た機能を備えている状態に落ち着いてしまうためです。
だからこそ、選ばれる理由は製品の周辺に設計する必要があり、以下の様な6つの切り口から多角的に整理することが推奨されます。

  • ①プロセスの質: レスポンスの速さ、導入ステップの簡潔さ。
  • ②失敗の排除: 返金保証、検証可能なトライアル環境。
  • ③低負担: 既存環境を変えずに導入できる容易さ。
  • ④信頼性と専門性: 特定業界への特化、豊富な実績。
  • ⑤開発思想: なぜこの製品を世に出したのかという哲学への共感。
  • ⑥特化: 「〇〇業界の商習慣に世界で一番詳しい」といったニッチな優位性。

④ Why You?──なぜ、この顧客にとって最適なのか

Why Youとは、「なぜ、この顧客にとって最適なのか」という問いであり、成約の直前に生まれる最後の不安に応えるものです。
「サービスの良さも他社との違いも理解した。しかし、自社のような規模・業界で本当に成果が出るのか」──買い手の頭に残るこの懸念が解けない限り、検討は最終段階で止まってしまいます。
ここで効くのは、一般論ではなく個別化された納得感です。
誰にとって、なぜ最適なのかをあらかじめ整理し、その相手が抱える課題を解決できることを具体的に示します。そして、ここで得られた納得感は、Why Usの弱さを補う力すら持ちます。機能面では競合が優勢な商材であっても、「自社の状況にはこれが合っている」という判断が、最後の一押しになるのです。

⑤ Why Now?──なぜ、今なのか

手段に納得しても、切迫感がなければ「来期でいい」と先送りされます。
多忙な担当者にとって、後回しは最も自然な選択です。
法改正や補助金の期限といった外的な締切、あるいは「1か月放置するごとに失われるコストと時間」の可視化によって、「いつでも買えるもの」から「今動かないと損をするもの」へと位置づけを変える。これが重い組織の腰を上げさせます。

どのコンテンツで、どのWhyに答えるか

5つのWhyは、すべてのコンテンツに均等に配置するものではありません。
訪問者の状態によって、答えるべき問いが変わります。
例えばランディングページには、比較検討段階の顕在層が集まるため、5つのWhyの中でもWhy UsとWhy Youを重点的に反映させます。
つまり、訪問者層の構成比を把握したうえで、どのWhyへの回答を重点的に反映させるか、これがコンテンツ設計の出発点になります。

まとめ

いかがでしたか。
デジタルマーケティングの成果が頭打ちになったとき、多くの企業が探すのは「まだ実施していない施策」です。
しかし本コラムで述べてきたように、その局面で不足しているのは施策の引き出しではなく、見込客の頭の中にある問いへの回答です。
顧客は、露出が多いから買うわけではありません。「今のままではいけない」「この手段が正しい」「この会社が自社に合っている」という納得があって、初めて動きます。
そしてBtoBでは、その納得が社内を通すための「大義名分」という形で必要とされます。だからこそ、5つのWhyに対する答えを用意しておくことが、そのまま成果につながっていくのです。
なお、ここで強調しておきたいのは、これは施策の実行を否定する話ではないという点です。
キーワードの追加やUIの改善といった地道な取り組みは、成果を生むための土台であり、早期に成果を出すうえで欠かせません。
重要なのは、その施策が5つのWhyのどこに効くのかを意識して実行することです。

問いを立て、答えを設計し、それを施策に落とし込む。この順序で取り組むことが、成果創出に繋がっていきます。

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