売れる商材を見極める3ステップ
:市場性・商品力・プロモーション力
「なぜかお問合せが増えない・成約率が悪い」?
優れたプロダクトを開発し、多額の予算を投じてプロモーションを展開しているにもかかわらず、期待した成果が得られないという課題に直面する企業は少なくありません。広告の露出を増やし、クリエイティブの最適化を繰り返してもコンバージョン率が向上しない、せっかく獲得したリードからの成約率が低いという状況にお悩みではないでしょうか?
このような販促活動に多大なリソースを投下しながらも成果が出ない状況において、多くの企業は「広告運用の精度」や「クリエイティブの質」といった戦術レベルの改善に走りがちです。しかし、成果が上がらない本質的な原因は、より根源的な戦略領域、すなわちマーケティングが成立するための構造的な部分に潜んでいる場合があります。
本コラムでは、「売れない」という事象をロジカルに分解し、市場の需要や温度感を正しく測定した上で、商品力を向上させるための設計を解説します。
売れる商材の共通点
市場において「売れる商材」には、共通点が存在します。
①市場性、②商品力のいずれか、もしくは両方が揃っていて、かつ③プロモーションをしっかりと行っている商材です。
① 市場性
商材が解決する課題に対し、世の中がどの程度の関心を寄せ、どの程度の頻度で解決策を求めているかという点です。
ユーザーの検索行動が多いことはもちろん、検索行動が増加している、逆に減少しているなども市場性の有無に影響します。
② 商品力
製品の機能や品質そのものの優劣と思われがちですが、ターゲットのニーズに対して競合他社よりも明確な優位性やエッジ(特化点)がある状態を指します。
顧客が持つ課題解決に有効な商材であるか、顧客から確実に選ばれる理由があるかが問われます。
③ プロモーション力
市場性・商品力がある状態で機能する「増幅装置」です。
課題を持つ顧客が多くとも、課題解決に最適な製品であっても、世に知られていなければ問い合わせをする人もいません。
プロモーションは顧客に情報を届け、信頼を構築するための伝達手段として機能します。
①〜③の関係は、足し算ではなく掛け算です。市場性・商品力のどちらか一方がゼロであれば、プロモーションにどれだけ投資しても成果はゼロになります。
市場性がない場合、そもそも購買する層が存在しないため、認知を広げても問い合わせにはつながりません。
一方、市場が大きくても、競合と差別化できていない・顧客課題にフィットしていない商材では、プロモーション以前に商材そのものの見直しが必要です。
プロモーションは「①市場性」「②商品力」のどちらか、あるいは両方が揃ってはじめて機能する増幅装置です。
まずは自社の商材がどちらに課題を抱えているかを正直に評価することが、デジタルマーケティングで成果を出すための出発点となります。
「市場性」の測定方法
自社の商材の市場性を分析するには、PEST分析やSWOT分析が用いられることが多いです。おそらくこうした代表的な分析方法は既に着手していることと思われるため、本章ではオンライン上での「今」と「将来性」の分析に活用できる、デジタルマーケティングならではの分析方法をご紹介します。
Googleキーワードプランナーによる「市場があるか」の分析
Google広告のツールであるキーワードプランナーを使えば、対象となるキーワードの月間検索ボリュームが算出できるため、理論上の最大リーチ可能数(市場規模の絶対値)を把握することが出来ます。
商材を今すぐ購入するような顧客が使う検索語句や、商材の購買に至る可能性のある課題に関する検索がされているか、事業を支える規模に達しているかを把握します。
ただし、BtoB商材は商材の顕在キーワード(例:○○ サービス)の月間検索回数が数十回など非常に少ない場合が多いです。
その場合は、より一般的な言い回しや、短めの単語で調べると月間検索回数が増える場合があります。
Googleトレンドを用いた「成長性」の分析
Googleトレンドを使えば、市場が拡大傾向にあるのか、あるいは縮小しているのかを時系列で把握することができます。
ただし、Googleトレンドでは2022年1月にデータ取得方法の仕様変更が実施されているため、デフォルトの「過去5年間」などで長期推移(2021年〜)を確認する際、仕様変更前のデータも期間に入れると検索量の変化を誤認するリスクがあります。そのため、現在の市場が過去と比較して増加/減少しているかの確認を行う際には、仕様変更以降のデータ(2022年以降の推移)で期間を設定することを推奨いたします。
市場性と商品力の関係
市場性と商品力の有無によって、商材は以下の4象限に区分され、それぞれどのポジションにいるかによって必要なプロモーション戦略が異なります。
本章では4象限それぞれに必要なプロモーション戦略をご紹介します。
① 市場性が高く、商品力も高い領域(右上)
市場ニーズが十分にあり、かつ競合に対する強みも明確な状態です。
この領域にある商材は、需要を確実に取りこぼさないよう、適切なプロモーション施策を行い、認知を拡大することに注力することが重要です。
② 市場性は高いものの、商品力が低い領域(左上)
需要は豊富に存在するものの、競合商材に対する自社商材の優位性が弱い状態です。
この領域にある商材では、プロモーションによってリーチ(露出)を広げることでコンバージョン率の低さをカバーする施策が重要となります。また、インサイドセールスや営業活動での対応力・提案力で競合との差別化を図ることも必要な施策です。
③ 市場性は低いものの、商品力が高い領域(右下)
商材自体は非常に優れているものの、市場のニーズやターゲット層が限定されている状態です。需要の総量が限られているため、不特定多数へ広く売り込む手法は非効率となります。
ターゲットに「確実に届く」「確実に刺さる」ピンポイントのプロモーション戦略が求められます。
④ 市場性が低く、商品力も低い領域(左下)
需要が乏しく、製品の強みも薄いため、そのままの状態では販売活動が極めて困難な領域です。
この場合、市場トレンドに商材を乗せることで市場性を高め②に移行する、あるいは商品ポジショニングを調整して差別化を図り③へ移行するといった、ポジション変更が必要となります。
市場性・商品力不足の対処法
②市場性は高いものの商品力が低い領域、③市場性は低いものの商品力が高い領域、のいずれかにいる状態、つまり自社の商材が「市場性が低い」あるいは「商品力が低い」領域に位置している場合、そのままプロモーションを強化してもCVや受注を拡大させることは困難です。
最初から右上の①(市場性・商品力ともに高い領域)にポジショニングできている商材はほとんどなく、受注を獲得するためには右上へと移動するための「ポジション変更」を検討・実施することが必要となります。
②が商品力を高める施策:エッジを立てる
自社の商材が市場で埋没している場合、あえて「すべての顧客」をターゲットから外す決断が必要となります。
商品そのものを抜本的に作り直すのではなく、ターゲットの絞り込みによって意図的にエッジを立て、特定の領域で圧倒的な適合度があるような訴求を行います。
特定の領域に特化し、価値の解像度を高める切り口には、主に以下の3点が存在します。
顧客規模・環境による限定訴求:対象とする顧客・使用シーンを限定した訴求を行い、専門性が高くその領域ではNo.1の商材であるような訴求を行います。
例として賃貸オフィス仲介が挙げられます。企業向け不動産仲介サービスは非常に多くレッドオーシャン状態です。かつ、物件紹介にはバンク情報を使用するため、競合と差をつけにくい場合も多々あります。そのため直近では「スタートアップ向け居抜き物件のみ紹介」「動画配信事業向け物件のみ紹介」といった尖ったニーズを扱う不動産仲介サービスが見られます。
フェーズ・目的に対する特化:導入・使用目的を限定した訴求を行います。
サイト構築サービスもレッドオーシャン化していますが「サイト構築」を訴求するのではなく「導入後の運用を重視した設計」「AIOに特化したリニューアル」というエッジを立てることで、サイトをリニューアルするだけでなく持続的な改善を行いたい層や、リニューアルのROIを重視する層に刺さる訴求を行うことができます。
特定の「負」の解消への適合:業界固有の商習慣や社会課題に最適化された商材として、その業界にいる人に優先的に選ばれる地位を確立します。
どのようなエッジが有効かについては、その絞り込みによって特定のセグメントにおける競合優位性が客観的に証明できるか否かにあります。自社商材と競合商材を比較し、特定の業界や使用シーンに限定すれば競合より利便性が高い・導入実績が多い部分がないかご検討ください。
③が市場を拡大する施策:市場の再定義
優れた機能や実績を有しながらも、時代の変遷とともに検索ボリュームが減少し市場性が低下している商材や、元々ニッチな商材については、「価値の再定義」や「攻略範囲の拡大」によって別のより広い市場を狙います。
トレンドの市場を開拓する
自社商材で解決できる課題のうち、トレンドや法改正などでニーズの拡大する市場を狙ったプロモーションを展開します。
社会課題との紐付け:既存のソリューションを、現在進行形の社会問題に対する解として提示します。例えば、配送管理システムを「ドライバー不足」への対応策として位置づける、あるいは環境配慮「モーダルシフト・グリーン物流」と関連付けた訴求を行います。これにより、顧客内での検討優先順位を劇的に引き上げることが可能となります。
面的攻略による市場の拡大
単一の主要キーワードだけでは月間検索ボリュームが少ない場合、ターゲットが抱く課題の周辺を網羅する「面の戦略」によって、対象とする市場の拡大を図ることができます。
過去の自社顧客の発言や課題をヒントに、課題認識をしたばかりのユーザーが調べそうな語句や、自社サービスに関連した語句を幅広く、検索結果の上位表示や広告出稿がされている状況を構築します。
用途や業種に応じた専用ページの展開:単一のキーワードで1位を奪取することに固執せず、関連するあらゆる検索意図に対して自社サイトの露出機会を創出します。
例えば、「パッケージ印刷」という一律の訴求にとどまらず、「レトルト食品パッケージ」「冷凍食品パッケージ」「環境にやさしいパッケージ」といった、ターゲットの具体的な用途・業種に応じた専用ページを増設することで、訴求できる顧客の拡大を図ることができます。
潜在需要の可視化:具体的なキーワードでは検索ボリュームが小さくても、「用途」「業種」「解決したい課題」などの展開パターン(周辺語句)を精緻に合算することで、一定の市場規模を確保できる場合があります。例として翻訳システム販売の場合、「翻訳システム」単体での検索回数には限りがあります。周辺語句「○○語翻訳」や、「海外論文」「インバウンド対策」といった、いずれ翻訳システムを必要とするような課題を持つユーザーが調べるキーワードに向けページを展開することで、隠れていた需要や周辺需要からの集客・お問合せ獲得も可能となります。
このように、自社の商材が置かれたポジションの課題(市場性不足、あるいは商品力不足)に応じて適切な施策を講じ、①の商品力も市場もあるポジションを目指すことが、プロモーションの投資対効果を最大化するための前提条件となります。
ただし、②市場性は高いものの商品力が低い領域や、③市場性は低いものの商品力が高い領域でもプロモーション戦略があります。次章ではポジション別のプロモーション戦略を詳しくご紹介します。
プロモーション力を高める
市場性、あるいは商品力のいずれかが高い状態にあることが、プロモーションの成果を引き出す前提条件であると冒頭でご紹介しました。
前章でご紹介したようなポジション変更が最もプロモーション効果が高まる施策であるものの、ポジション変更が難しい場合は今のポジションでプロモーションを見直すことで、成果を向上できる可能性があります。本章ではそれぞれ商材が属するポジションにあわせたプロモーション戦略をご紹介します。
ポジションごとのプロモーション戦略の展開
①市場性が高く、商品力も高いポジション
検索ボリュームが大きく、既に市場の需要が顕在化しており、かつ自社の強みも明確な商材においては、リーチの拡大(数の拡大)を図る戦略が正攻法となります。
競合他社と比較検討されることを前提とし、リスティング広告やディスプレイ広告などを広範に展開して認知拡大を進めます。
ここでは、流入数とコンバージョン率を緻密に管理し、獲得効率を維持しながら、適切な表現・訴求によって市場シェアを確保するアプローチが重視されます。
②市場性が高く、商品力が低いポジション
市場の需要は大きいものの、自社の競合優位性が十分に確立されていない商材においては、リーチはしたものの商談化に至らない、といった結果になってしまう可能性があります。
そのため、具体的な発注先検討段階である顕在層はなく、情報収集段階の潜在層へ向けてリーチを広げるアプローチが有効です。
具体的には、顧客の課題の言語化を助けるホワイトペーパーなどのコンテンツを提供してリード(個人情報)を獲得し、その後のインサイドセールスや営業活動を通じた丁寧なフォローによって、自社の対応力や専門性で競合との差別化を構築します。
③市場性が低く、商品力が高いポジション
プロダクト自体の競合優位性はあるものの、検索ボリュームが少ないニッチな領域の商材は、マスに向けた認知施策を行っても、投資対効果が合わない可能性高いです。
需要の総量が限られているため、不特定多数ではなく、特定の課題を抱えるターゲット層へ深くアプローチする打ち手が有効です。
具体的には、業界向け媒体への出稿や、IPターゲティング広告による狙った企業へのピンポイントな広告配信や、一般キーワードでSEO/AIO対策、リスティング広告でリーチを図るものの、訴求内容は特定業界に特化した内容にするなどです。
成果が頭打ちになった時の撤退基準
市場の需要が乏しく、製品の優位性も構築できていない④市場性・商品力ともに低いポジションの商材においては、まずポジションを②や③に移行し、その後プロモーションを行います。
しかし、これらのポジション変更を行っても状況が改善しない、ポジション変更が難しい場合は、プロモーション活動をほどほどに留める、あるいは現状のリソースで収益を最大化する「維持」の選択をとることも考える必要があります。
広告費の増額や制作リソースの増強を行っても、CPA(顧客獲得単価)の高止まりが継続し、ROIの停滞が顕著な場合は、当該市場における顕在層を既に網羅したか、あるいは商材自体のライフサイクルが衰退期に向かっている可能性もあります。
投資の継続を抑え、①②③にある別商材へリソースを再分配することも、経営資源の最適化する意思決定基準となります。
まとめ
「商材が売れる」という現象は、決して偶発的な幸運や一時的な流行によってもたらされるものではありません。これまでに解説した通り、売れる商材の成立要件は「市場性 × 商品力 × プロモーション力」の結果です。
もし「デジタルマーケティングで投資対効果が合っていないような気がする」といったお悩みがある場合は、まず自社商材のポジションと、現状の施策がマッチしているかご確認いただくことをお勧めいたします。